診療

放射線診断

(文責:那須克宏、田中優美子)

はじめに

放射線診断は“画像診断”とも呼ばれています。おそらくこの呼び名の方が一般の方々には馴染みがあるかもしれません。要するにコンピューター断像撮影得(CT), 磁気共鳴画像(MRI)などの画像を用いて体内の状態を観察、いろいろな疾患の診断をつける技術です。放射線診断医はその専門家ということになります。日本におけるCT, MRIの普及台数は先進国中ダントツで(2005年の統計では日本における普及率はCTで100万人あたり92.6台、MRIは35.5台で、他の先進国の平均はそれぞれ13.3台、5.5台)、さらに現在の画像診断機器の急速な発達は従来画像診断の対象となってきた疾患に対する診断精度の向上をもたらしただけではなく、画像診断の対象になる疾患も増加させています。このような状況のため日本では放射線診断医の慢性的な人手不足が続いています。言い方を変えるとしばらくの間は放射線診断医を志す医学生のみなさんにとっては就職口の不安が少ない診療科と言えるでしょう。
放射線診断は使用する機器によりいくつかの分野に分類されます。以下にはそれぞれの分野について説明を行います。

単純X線撮影

いわゆる“レントゲン”です。ドイツのレントゲン博士が1895年にX線を発見し、翌年には早くも骨の写真が撮影できることがわかり、医療技術として急速に普及しました(これが放射線診断学の始まりです。つまり放射線診断学はわずか100年ちょっとしか歴史が無い若い学問なのです)。レントゲン博士のこの功績に対してノーベル賞が授与されています。この後記載する造影X線撮影やCTなどの基本になっている技術です。かつてに比べて重要度が低下しているのは確かですが、画像のデジタル化、フラットパネルディテクターの導入に引き続き、フォトンカウンティング法の臨床への応用も始まっており、今後も地味に発展が続くと予想されています。
多くの大学の放射線科で単純X線撮影の読影を行わなくなっているなか、筑波大学放射線科では放射線診断学の基本である単純X線撮影のトレーニングを維持しています。なかでも胸部単純エックス線写真にはきわめて多量の情報が含まれており、緻密な読影によりいかにその情報を引き出すかは放射線診断医の醍醐味のひとつでもあります。

レントゲン博士の夫人の手 最新デジタル技術を用いた乳腺撮影

左は世界最初のレントゲン写真である“レントゲン博士の夫人の手”、右は最新デジタル技術を用いた乳腺撮影です。乳腺の上部に小さな石灰化が多数、集族して描出されているのがわかるでしょうか?典型的な非浸潤性乳管癌の所見です。この100年でのレントゲン撮影の技術の進歩が実感される画像です。

造影X線検査

いわゆる「X線透視」です。バリウムを使った消化管造影査が代表です。 消化管造影も単純X線撮影と同様、かつてほどの重要性はなくなっていますが(内視鏡技術の進歩は消化管造影と内視鏡の立場を完全に逆転させました)、胃がん健診ではまだ主役の座にある技法です。また、消化管造影における透視の技術は血管撮影・IVR の基本でもあり、若い先生方はここで「正しい透視の出し方」をたたき込まれることになります。筑波大学ではCアームを搭載したX線透視装置を導入し、消化管撮影技術を継承し、上部消化管造影や注腸造影を自分でできる放射線科医を育成しています。また消化器科との良好な関係を利用し消化管透視と内視鏡のトレーニングを同時に受けることが可能なカリキュラムを採用しています。

東芝製Cアーム型X線TVシステムUltimax Cアームとデジタル平面検出器の組み合わせ

東芝製Cアーム型X線TVシステムUltimaxが導入されている。任意の方向からの撮影を可能にしたCアームとデジタル平面検出器の組み合わせは非常に使いやすい。右は実際にこの機械を用いて撮影された胃角部の早期胃癌です、

CT(コンピューター断層撮影)

現在の放射線科の仕事の中心、いえいえ、現在の医療の中心といっても過言ではない最重要技術、それがCTです。現在のCTは多列化が急速に進んでおり(multi-row detector CT, MDCTと言います)、筑波大学では64列、16列のMDCTが導入されていますが、新病棟では更に検知器の列数の多いMDCTが導入される予定です(列数とは線管球が一回転する間に得ることができるスライス数、64列ならば一気に64枚の画像が得られるという事です)。この技術によりCTは全身を短時間で、しかも任意方向の再構成断面が作成可能な最強診断機器に進化しました。更に新棟では逐次近似再構成法(CTの被曝を劇的に減らす事ができる新技術です)、dual energy scan(異なるエネルギーを持った2種類のX線を用いて特定の元素の検出を行う技術です)も使用可能になる予定です。筑波大学放射線科では 冠動脈CTを除く全領域のCTの検査・読影を行っており、CTの読影能力を磨き、最新のCT技術の経験を得るには最適の環境と言えるでしょう。

フィリップス社製MDCT装置Brilliance 64 slice データから再構成した3D画像

フィリップス社製MDCT装置Brilliance 64 sliceおよびそれを用いて撮影したデータから再構成した3D画像。腹腔動脈と上腸間膜動脈が共通幹を形成しているのがわかります。

被ばくのはなし

MDCTは素晴らしい技術なのですが、一方比較的被ばくの多い検査でもあります(一部位、一回の撮影で10mSv程度被ばくすると考えられています)。福島原発事故以来、医療被曝に対する患者様の不安が高まっているようです。残念ながら診断技術の未熟さや勘違いから必ずしも必要でない CT 検査が行われてしまうこともときにありますが、私たち放射線科医は常に「被ばくの正当性」に留意し、無駄なCT検査による被ばくを避けるよう日々精進しております。つきましては患者さまには微々たる被曝を恐れて必要なCT検査を受ける事を躊躇して診断の遅れを招くことのないよう、ご賢察いただきたいと思います。殆どの場合、CT検査によるメリットは被曝による害を遥かに上回るものであると理解していただいて間違いはありません。さらに今後は技術の進歩でCTの被曝は劇的に減少することも確実視されています。

MRI(磁気共鳴画像)

CTと並ぶ現在の放射線診断の中心です。CTに比べて撮影に時間がかかる、動きに弱い、撮影範囲が狭いなどの欠点はあるものの、CTと違い被曝がない事に加え、遥かに高いコントラスト分解能(異なる組織を異なる色調で描出する能力のことです)が特長です。さらに新たな撮影方法の開発によりその能力に磨きがかかっています。専門にしている我々でもどこまで技術が進歩するのか、予想もつかない状態です。筑波大学放射線科は日本でも有数のMRIの新技術の開発サイトです。開発途中の撮像法も他施設に先駆けて使用することが可能です。またCTと同様、MRIにおいても全領域で検査と読影を担当しており、MRIの最新技術の開発に携われ、かつ全身のMRIの読影のトレーニングも受けられるという、大変贅沢な環境を用意しています。

フィリップス社製3Tesla MRI装置 拡散強調画像から再構成されたdiffusion神経撮影

フィリップス社製3Tesla MRI装置、Achieva 3.0T TXが導入およびこの装置により撮影された拡散強調画像から再構成されたdiffusion神経撮影。右肺尖部には肺癌があり、肺癌が右腕神経叢に浸潤している状態が描出されています。この装置の他に1.5TのMRIが2台導入されており、新棟ではそのうちの1台が3T装置に更新予定です。

超音波検査

超音波は最も簡便で侵襲がなく、単純エックス線撮影に次いでコストの安い、画像診断の優等生です。本学では超音波診断は機能検査部に属することから、同部の臨床検査技師と協力して精密な検査を行っています。大学病院という施設の特殊性ゆえ、虫垂炎の診断を依頼されることはさほど多くありませんが、腹部領域では胆石、膵癌といった一般的に超音波が発見契機となる疾患は勿論、胃がんや腸重積まで、依頼があれば超音波で診断しており、研修医の先生方にも多彩な症例を経験してもらっています。また、高周波プロープを用いた表在臓器(乳腺、甲状腺、唾液腺、頸部、神経など)の診断は乳腺甲状腺外科と協力して別枠で検査を行い、乳腺についてはマンモグラフィーやMRの読影と併せ、乳癌の診断もできる放射線科医を育成しています。

超音波検査予定表(放射線科が関与する分のみ)

AM 消化器 消化器 消化器
PM 表在 泌尿器(精巣含む) 表在

plio series

当院では東芝 Aplio series 3台(写真)、日立 HI Vision、GE LOGIQ E9 の5台体制で検査を行っており、Doppler は勿論、造影超音波、3D 再構成にも対応しています。

PACSと読影システム

PACS(Picture Archiving and Communication Systems)とはレントゲンフィルム無しにコンピューターモニター上に医療画像を表示するシステムのことです。筑波大学付属病院では全国に先駆けて PACS を導入し7年前からは完全フィルムレスに移行し、例外を除き画像をフィルムで見ることは無くなりました。同時に読影システムの整備も進んでいます。読影室には簡易的なワークステーション機能を持った読影端末が用意されており、全ての読影端末には病院全体の医療情報システムと連結された読影レポート作成用のパソコンが併設されています。かなり効率の良い読影システムが構築されていると自負しております。また読影端末付属のワークステーションでは難しい画像処理をするためのより高次機能を備えたワークステーションも複数台導入されています。

読影システムの概観

読影システムの概観。左上はワークステーション、左下はレポーティングシステム、その前にあるのは音声入力用のアミボイス、右側にあるのは画像参照用の高精細モニター2面。ワークステーションに表示されているのは“造影X線検査”において提示した症例のCTから再構成した仮想内視鏡画像と多方向断面画像です。

カンファレンス

放射線診断科にとって検査・読影と並んで大事な仕事、それはカンファレンスです。部門内でレジデント教育を主目的としたデイリーカンファレンスおよび抄読会、他の診療科や病理診断部との間で行っている合同カンファレンスがあります。合同カンファレンスの一覧を以下に記載しますが、かなり充実した内容になっているのがおわかりいただけるかと思います。このように実際に患者様と接している診療科の先生方と密にコミュニケーションをとることにより、我々自身の診断能力を高めると同時により診療科のニーズを汲み取った検査を行う努力を行っています。

消化器カンファレンスの一場面 カンファレンス一覧
抄読会 毎週月曜
デイリーカンファレンス 水曜を除く毎日
脳外科カンファレンス 毎週火・木曜
消化器カンファレンス 毎週水曜
呼吸器カンファレンス 毎週木曜
整形外科カンファレンス 毎週火曜
乳腺カンファレンス 毎週水曜
婦人科カンファレンス 毎週金曜
ICUカンファレンス 毎週火曜
小児科カンファレンス 隔週水曜
泌尿器科カンファレンス 毎月最終火曜

消化器カンファレンスの一場面。プロジェクターを用いて臨床情報と画像を並べて大画面でプレゼンテーション中。

Interventional radiology, IVR

(文責:高橋信幸、森 健作)

IVRは画像ガイド下にカテーテル等を用いて診断治療を行う手技の総称であり,血管系と非血管系に大別されています。当科では院内の多くの科からの依頼を受けて心臓を除くIVRの多くを手掛けています。
血管系IVRはさらに腫瘍と血管病変に対する治療に分けられます。腫瘍に対する治療で最多のものは肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法であり、全例を放射線科で行っています。適応や治療方針について消化器内科とは毎週1回カンファランスを行い、ラジオ波焼灼療法を行う消化器内科、陽子線治療を行う放射線腫瘍科、外科切除を行う消化器外科と連携しながら、種々の組合せにより肝細胞癌に対する集学的治療を行っています.このほか、泌尿器科の依頼に対して膀胱癌に対する動注カテーテル留置も多く行っており、変わったところでは皮膚腫瘍などその他の腫瘍に対する動注を行うこともあります。また、整形外科からの依頼で椎体全摘前の術前塞栓術を行うこともあります。

血管病変に対する治療は塞栓術と血管形成術に分かれます。塞栓術のうち、出血に対する塞栓術は緊急IVRの柱であり,迅速に対応しています.外傷全般、喀血,吐下血,産科出血や術後出血など多岐にわたります.その他、頭部以外の動脈瘤や血管奇形に対する塞栓術を行っています。血管形成術では、腸骨動脈・下肢動脈の経皮的血管形成術・ステント留置術を中心に腎動脈狭窄、透析シャントなどに対する治療にも対応しています。胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は心臓血管外科と協力のもと当科主導で行っており、2013年1月からは新病棟に血管造影装置を備えたハイブリッド手術室が開設され更なる症例の増加が見込まれます。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術前後の血管造影
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術前後の血管造影

非血管系IVRでは、CTガイド下膿瘍ドレナージとCTガイド下生検を全例当科で施行しています。脳神経系のIVRは脳神経外科が中心となって施行されていますが、当科のスタッフも診断・治療に積極的に関与しています。以上の他にも血液内科からの依頼で頸静脈的肝生検術、小児外科からの依頼に対して経皮経肝的門脈拡張術、消化器外科からの依頼で術前の門脈塞栓術など様々な院内のニーズに対応しています。また、放射線科医が常駐していない近隣病院からのIVR依頼もあり、出張することもしばしばあります。大学病院にとどまらない、広い地域のIVR治療を担っています。

CTガイド下生検
CTガイド下生検

2015年 IVR 実績

IVR・診断血管造影 354件
1 Vascular IVR (90)
 1.1 Endovascular aneurysm repair
  1.1.1 Thorax 16
  1.1.2 Abdomen/Iliac 30
  1.2 Percutaneous transluminal angioplasty/Stenting
   1.2.1 Femoro-popliteal 3
   1.2.2 Iliac 4
   1.2.3 Vascular access 9
  1.3 Trans arterial embolization (TAE) for arteriovenous malformation
   1.3.1 Pulmonary 5
   1.3.2 Renal 1
  1.4 TAE for endoleaks
   1.4.1 Type I 3
   1.4.2 Type II 1
  1.5 TAE for aneurysms
   1.5.1 Coronary 1
   1.5.2 Internal mammary 1
   1.5.3 Splenic 1
   1.5.4 Renal 1
   1.5.5 Internal iliac 1
  1.6 Portal system interventions
   1.6.1 Percutaneous transhepatic portal vein embolization 4
   1.6.2 Balloon occluded retrograde transvenous obliteration 4
   1.6.3 Percutaneous transhepatic obliteration 1
   1.6.4 Partial splenic embolization 1
   1.6.5 Portosystemic shunt embolization 3

2 Oncology IVR (207)
  2.1 Hepatocellular carcinoma
   2.1.1 Transarterial chemoembolization 144
   2.1.2 Transarterial infusion (TAI) 6
  2.2 Bladder cancer
   2.2.1 TAE of superior gluteal artery 8
   2.2.2 TAI 13
  2.3 Preoperative TAE 2
  2.4 Central venous port 15
  2.5 CT/US guided biopsy 17
  2.6 CT guided RFA 1
  2.7 Transvenous liver biopsy 1

3 Emergency IVR (43)
  3.1 TAE
   3.1.1 Thorax 7
   3.1.2 Abdomen 17
   3.1.3 Gynecology 7
   3.1.4 Extremities 2
  3.2 CT/US guided drainage 10

4 Venous sampling (14)
  4.1 Adrenal 13
  4.2 Pancreas 1

2014年 IVR 実績

IVR・診断血管造影 359件
1Vascular IVR (107)
 1.1 Stentgraft (53)
  1.1.1 TEVAR        10
  1.1.2 EVAR        43
  1.2PTA/stent (31)
   1.2.1 SFA-BTK     10
   1.2.2 Iliac         5
   1.2.3 Renal        2
   1.2.4 Vascular access    13
   1.2.5 Others        1
  1.3TAE-AVM (12)
   1.3.1 Pulmonary     4
   1.3.2 Renal         4
   1.3.3 Pelvic         4
  1.4TAE others (11)
   1.4.1 Pre-EVAR    6
   1.4.2 Type-2 EL    1
   1.4.3 Splenic An    1
   1.4.4 Pediatric    3

2Oncology IVR (199)

  2.1Hepatoma (131)
   2.1.1 TACE        128
   2.1.2 TAI        3
  2.2Bladder cancer (33)
   2.2.1 TAE of SGA    10
   2.2.2 TAI        23
  2.3Preoperative TAE    2
  2.4CV ports        14
  2.5CT/US biopsy        19

3Emergency IVR (29)

  3.1TAE (24)
   3.1.1 Thorax         5
   3.1.2 Abdomen    13
   3.1.3 Gynecology    6
  3.2Pancreatitis TAI    1
  3.3CT guided drainage    4

4Venous sampling (24)

  4.1Adrenal    23
  4.2ASVS        1

Abbreviations
IVR: interventional radiology
TEVAR: thoracic endovascular aortic repair
EVAR: endovascular aortic repair (abdomen)
PTA: percutaneous transluminal angioplasty
SFA: superficial femoral artery
BTK: below the knee
TAE: transarterial embolization
AVM: arteriovenous malformation
EL: endoleaks
An: aneurysm
TACE: transarterial chemoembolization
TAI: transarterial infusion
SGA: superior gluteal artery
CV: central vein
CT: computed tomography
US: ultrasonography
ASVS: arterial stimulation and venous sampling

2013年 IVR 実績

IVR・診断血管造影 238件
肝化学塞栓療法・肝動注療法                                            90例
腸骨・下肢動脈拡張・ステント留置                                     18例
膀胱動注カテーテル留置                                                   18例
大動脈ステントグラフト内挿術                                            17例
CT・US・透視ガイド下手技(生検・ドレナージ等)                17例
緊急動脈塞栓術                                                               14例
骨盤内動脈血流改変                                                         14例
静脈サンプリング                                                               13例
動静脈奇形塞栓術                                                               7例
透析シャント拡張術                                                             7例
CVカテーテル・ポート留置                                                   7例
術前動脈塞栓                                                                     4例
胆道系手技                                                                        4例
術前門脈塞栓                                                                     3例
膵動注カテーテル留置                                                         3例
バルーン閉塞下胃静脈瘤硬化療法                                     2例

注:検査レポート確定者が当科スタッフであった症例のみの累計。表に含まれていない多くの脳神経IVRにも積極的に関与しています。

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