研修医・学生の皆さまへ
筑波大学附属病院の放射線診断・IVR科では、毎日病院内の複数の診療科とカンファレンスをしています。筑波大学の研修医・学生の皆さんが参加されているカンファレンスに必ず放射線科医がいるばずです。放射線診断・IVR科では、いろいろな診療科と連携して、筑波大学附属病院の診療をより良いものにするために一緒に頑張っています。どの診療科で研修しているときでも、画像診断で困ったことや疑問がありましたら、いつでも相談にのりますので、お気軽に読影室までお越し下さい。
卒後教育・専門研修について
レジデントの1週間
学生実習について
放射線科医からの声
卒後教育・専門研修について
レジデントの1週間
学生実習について
放射線科医からの声
初期研修医の研修プログラム
放射線診断医として、一人前に画像診断ができるようになるためには、3つのトレーニングが必要です。
1つ目は、複数の診療科にまたがる広い分野の画像診断の勉強です。時には直接関わらない治療方法なども画像診断をする上では勉強になります。これらの勉強については、日本語でも良い教科書がたくさん出ていたり、オンライン・オンサイトで良い講義や勉強会があったり、勉強しやすい環境がありますので、熱心な先生は場合によっては上級医よりも多くの知識を自分で手に入れることが出来ます。
2つ目は、画像を見る目を訓練することです。実は、何万枚もの正常画像をみることはとても大切です。これはある程度の期間、連続して地道に頑張らないと身につかない能力です。特に研修のはじめの時が重要で、この時期にまとまったトレーニングが出来ないと、その後も読影が苦手のままになってしまいます。放射線科でトレーニングすれば、画像をボーッと(寝ている訳ではなく(笑)、集中して画像全体を見てます)画像を見ることで、病変がすっと分かるようになります。
3つ目は、画像診断報告書(レポート)を書く能力を身につける事です。画像を文字に起こすことは意外と難しいです。放射線科医の書くレポートは、主治医に伝わり、患者さんに反映されて始めて役に立ちます。そのため、主治医が分かりやすいような記載をする必要があります。場合によっては、主治医の顔を思い描きながら、レポートを書くこともしています。
後者の2つについては、放射線科でトレーニングをしないと身につかない能力です。筑波大学附属病院のレジデントプログラムはとても充実したプログラムです。ぜひ、全国からたくさんの人に参加していただければと思います。見学はいつでもお受けしておりますので、筑波大学附属病院臨床教育センターもしくは放射線科秘書までご連絡ください。
卒後教育・専門研修について
研修カリキュラムについて
最初の1年は小児病院を含めた関連病院で引き続き研修を行います。最後の1年間はチーフレジデントとして大学に戻り,若いレジデントに対して指導的立場となり,各セクションで責任を任された仕事をするとともに,個人の好みに応じてsubspecialty(副専門分野)をもち,より深く研修を進めます。日本専門医機構認定 放射線科専門医を取得するためには,少なくとも1演題の筆頭での発表学術集会の発表と学術論文の執筆(研究論文の作成に十分貢献した場合は共同著者であっても認定可能)が義務付けられています。この期間に研究活動,論文作成を行います。国際学会での発表も可能です。
レジデント修了後は引き続き筑波大学に残る人、関連病院に勤務する人、留学する人など様々です。個々の人生設計に合わせて相談して決定します。レジデント終了後に大学院生となってより重点的に研究を進める人もいます(アカデミックレジデント制度を利用して専門研修中に大学院に進学することも可能です)。
レジデントの1週間
ここでは、例として専攻医4年目のチーフレジデントの1週間を呈示します。
レジデントの予定は、チーフレジデント(専攻医3・4年目)が各レジデントの希望を聞いて、計画しています。上級医の予定は、ほぼ固定ですが、レジデントの予定は3ヶ月毎に変更します。午前および午後の検査を半日単位で、CT,MR,超音波,上部および下部消化管造影,IVR,単純写真の各セッションに割り当てます(1週間で10コマ)。卒後臨床研修を修了して、放射線科専攻医になったばかりのシニアレジデント(専攻医1年目)は、CTと単純写真は、1年中通して検査を担当しますが、その他の検査は、3ヶ月毎にローテートします。
ここでは、例として卒後6年目のレジデントの1週間を呈示します。
午前 | 午後 | |
---|---|---|
月曜 | IVR | CT |
火曜 | 院外研修 | 院外研修 |
水曜 | MR | 単純写真 |
木曜 | MR | 単純写真 |
金曜 | US | 注腸造影 |
午前
IVR:肝細胞癌のTACEを中心に、副腎静脈サンプリング、肺AVM塞栓、腎AVM塞栓、大動脈ステントグラフト、膿瘍ドレナージ、CTガイド下生検など多彩な内容の依頼に対して対応します。もちろん、上級医と一緒に。また、出血など緊急のIVRにも対応しています。希望により、neuro IVRにも参加することが出来ます。
午後
CT;一緒に検査を担当する上級医と協力して、時間内に撮影されたCTを全て読影します。紹介受診される患者さんが多いので、一般病院よりも込み入った症例が多いですが、その分、勉強になります。分からない点は上級医に相談しつつ、読影していきます。CTの検査計画作成や臨床医からの緊急CTの相談なども受けます。
午前・午後
近隣の一般病院で読影を行います。
午前
MR;上級医とペアで担当。この枠のMRは、脳のMRIが多いです。脳腫瘍や、脳血管疾患など多彩な疾患があります。
午後
単純写真;自分で自由に使ってよい時間です。単純写真は一日に数症例が割り当てられます。この時間に読んでも良いのですが、私は空いた時間をみつけて、毎日少しづつ読影しているので、この時間は午前のMRIの読影を引き続き行っています。また、16時からは、消化器カンファレンスがあり、これの担当をしているので、その準備を行う時間にしています。
夜間
平日夜間オンコール;週に一度程度回ってくるオンコール当番の日です。学会発表資料を作成しながら読影室に残っていると、夜20時に急性腹症患者に対する緊急CTの依頼があり、造影CTを撮像しました。セカンドコールの上級医のチェックの元でレポートを確定し、依頼医に画像所見を電話でも伝えました。この日呼ばれたのはこの一件のみでした。
午前
MR;上級医とペアで担当。この枠のMRは、脳のMRIが多いです。脳腫瘍や、脳血管疾患など多彩な疾患があります。
午後
単純写真;自分で自由に使ってよい時間です。単純写真は一日に数症例が割り当てられます。この時間に読んでも良いのですが、私は空いた時間をみつけて、毎日少しづつ読影しているので、この時間は午前のMRIの読影を引き続き行っています。また、16時からは、消化器カンファレンスがあり、これの担当をしているので、その準備を行う時間にしています。
夜間
平日夜間オンコール;週に一度程度回ってくるオンコール当番の日です。学会発表資料を作成しながら読影室に残っていると、夜20時に急性腹症患者に対する緊急CTの依頼があり、造影CTを撮像しました。セカンドコールの上級医のチェックの元でレポートを確定し、依頼医に画像所見を電話でも伝えました。この日呼ばれたのはこの一件のみでした。
午前
超音波;腹部の超音波検査を中心に、自分でスキャンして、上級医のチェックを受ける形で、検査を進めていきます。
午後
注腸検査 シニアレジデントと一緒に、検査を担当しています。
カンファレンスは、消化器、呼吸器のほか、脳神経外科、整形外科、乳腺甲状腺外科、婦人科、泌尿器科、小児科、ICUとのカンファレンスがあります。それぞれ、上級医やチーフレジデントが担当しており、レジデントは自由に参加できます。このほか、毎日17時からは、放射線科内の教育カンファレンスがあります。
土日や祝日のオンコール当番は月1, 2回程度で済むように調整されています。オンコール当番でなければ業務はありません。プライベートの時間を楽しんだり、画像診断の学会や研究会に参加したり、各々好きな時間を過ごしています。
学生実習について
学生実習
毎週午前中はIVR検査、月曜日と金曜日の午前中は超音波検査を当科スタッフが行っており、各検査ごとに1人~2人の学生さんが見学しています。放射線診断科=画像読影と思っていた学生さんには新鮮に映るかもしれません。
これらの手技は当科にとって画像読影に並ぶ重要な業務であり、日々各科から依頼される検査内容に対して的確な回答を出せるよう精進しています。
学生さんには各々1つずつ担当症例が割り当てられます。それらを実習時間中に自分で読影し、実習2週目の木曜日と金曜日に発表してもらいます。2週間かけて一つの症例をじっくり考えるということは、臨床の場に立った後もなかなか経験できないことであり、貴重な体験になると思います。
また、毎週昼過ぎにはiPadを使った画像診断演習があり、その場で様々な所見を拾う練習を行います。自分で画像を動かし、時には色調を変えてみたり、断面を変えてみたりと様々な角度から画像を分析してもらい、できるだけたくさんの所見を見つけてもらいます。質問や疑問があればその場で当科レジデントが丁寧に答えます。
講義実習もあり、午後はほぼ連日、当科に関する事柄についてそれぞれ担当のスタッフから講義があります。その内容は下の図にも示すとおり、CT、MRIから放射線被曝まで多岐にわたります。
現代医療において画像検査は必要不可欠であり、その専門家である放射線診断医は他科とのカンファレンスに多数出席しています。学生さんにはそのうち、毎週月曜日の呼吸器カンファレンスと毎週水曜日の消化器カンファレンスに出席していただいています。画像所見によって診断や治療が変わってくる中で放射線診断医の担う役割は重要であり、他科の医師との議論によって方針が決まっていく点を見ていただければと思います。(なお、ほかにも頭頸部や小児科、脳外科カンファレンスなどがありますが、昨今の情勢もあり現在は学生さんの出席は見合わせています。)
科内でのカンファレンスも積極的に行われており、毎週月曜日夕方には担当者が研究や学会発表の予演、抄読会などを行うグランドカンファレンスと、その週に予定されているIVR症例を検討するIVRカンファレンスが行われています。また、隔週火曜日夕方には超音波検査の症例を検討するUSカンファレンス、隔週火曜日と毎週木曜日、金曜日の夕方にはレジデントが主体となり気になった症例や教育的症例を発表するデイリーカンファレンスが行われています。これらのカンファレンスにも学生さんには出席していただいています。
ローテート中は何か聞きたいことがあれば遠慮せずにスタッフ・レジデントに話しかけてみてください。放射線診断・IVR科に興味を持っていただけると我々も嬉しく思います。
当科での実習が学生の皆さんにとって有意義なものになることを祈っています。
放射線科医からの声
教授からのご挨拶
現代の医療機関ではキャンサーボードなどの複数の診療科で一人の患者さんの診断や治療方針などを話し合うことが当たり前になっています。その中で画像診断という見方から患者さんを見ることは、専門家集団のなかでも多方面からの医療的視点による検討という意味でもとても大切です。
また、これからの時代、医師の働き方にも多様性が重要になります。放射線診断医は、デジタルデータを使って画像診断を行いますので、病院だけでなく、自宅や海外からも読影を行う事ができます。AIや新しい検査方法など、これまでになかった診断や治療方法を踏まえた「新しい放射線科医」は皆さんが作り上げていくものだと思います。これからの医療を支える医療人として、私たちと一緒に新しい放射線科医の役割を果たせるように頑張りましょう。
筑波大学放射線診断・IVR学 教授
中島崇仁