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診療について

放射線診断は“画像診断”とも呼ばれています。おそらくこの呼び名の方が一般の方々には馴染みがあるかもしれません。要するにコンピューター断像撮影得(CT), 磁気共鳴画像(MRI)などの画像を用いて体内の状態を観察、いろいろな疾患の診断をつける技術です。放射線診断医はその専門家ということになります。日本におけるCT, MRIの普及台数は先進国中ダントツで(2005年の統計では日本における普及率はCTで100万人あたり92.6台、MRIは35.5台で、他の先進国の平均はそれぞれ13.3台、5.5台)、さらに現在の画像診断機器の急速な発達は従来画像診断の対象となってきた疾患に対する診断精度の向上をもたらしただけではなく、画像診断の対象になる疾患も増加させています。このような状況のため日本では放射線診断医の慢性的な人手不足が続いています。言い方を変えるとしばらくの間は放射線診断医を志す医学生のみなさんにとっては就職口の不安が少ない診療科と言えるでしょう。 放射線診断は使用する機器によりいくつかの分野に分類されます。以下にはそれぞれの分野について説明を行います。
CT

CT(コンピューター断層撮影)

現在の放射線科の仕事の中心、いえいえ、現在の医療の中心といっても過言ではない最重要技術、それがCTです。

現在のCTは多列化が急速に進んでおり(multi-row detector CT, MDCTと言います)、筑波大学では64列、16列のMDCTが導入されていますが、新病棟では更に検知器の列数の多いMDCTが導入される予定です(列数とは線管球が一回転する間に得ることができるスライス数、64列ならば一気に64枚の画像が得られるという事です)。

この技術によりCTは全身を短時間で、しかも任意方向の再構成断面が作成可能な最強診断機器に進化しました。更に新棟では逐次近似再構成法(CTの被曝を劇的に減らす事ができる新技術です)、dual energy scan(異なるエネルギーを持った2種類のX線を用いて特定の元素の検出を行う技術です)も使用可能になる予定です。筑波大学放射線科では 冠動脈CTを除く全領域のCTの検査・読影を行っており、CTの読影能力を磨き、最新のCT技術の経験を得るには最適の環境と言えるでしょう。

MDCTは素晴らしい技術なのですが、一方比較的被ばくの多い検査でもあります(一部位、一回の撮影で10mSv程度被ばくすると考えられています)。福島原発事故以来、医療被曝に対する患者様の不安が高まっているようです。残念ながら診断技術の未熟さや勘違いから必ずしも必要でない CT 検査が行われてしまうこともときにありますが、私たち放射線科医は常に「被ばくの正当性」に留意し、無駄なCT検査による被ばくを避けるよう日々精進しております。つきましては患者さまには微々たる被曝を恐れて必要なCT検査を受ける事を躊躇して診断の遅れを招くことのないよう、ご賢察いただきたいと思います。殆どの場合、CT検査によるメリットは被曝による害を遥かに上回るものであると理解していただいて間違いはありません。さらに今後は技術の進歩でCTの被曝は劇的に減少することも確実視されています。

MRI(磁気共鳴画像)

CTと並ぶ現在の放射線診断の中心です。CTに比べて撮影に時間がかかる、動きに弱い、撮影範囲が狭いなどの欠点はあるものの、CTと違い被曝がない事に加え、遥かに高いコントラスト分解能(異なる組織を異なる色調で描出する能力のことです)が特長です。

さらに新たな撮影方法の開発によりその能力に磨きがかかっています。

専門にしている我々でもどこまで技術が進歩するのか、予想もつかない状態です。筑波大学放射線科は日本でも有数のMRIの新技術の開発サイトです。開発途中の撮像法も他施設に先駆けて使用することが可能です。またCTと同様、MRIにおいても全領域で検査と読影を担当しており、MRIの最新技術の開発に携われ、かつ全身のMRIの読影のトレーニングも受けられるという、大変贅沢な環境を用意しています。

フィリップス社製3Tesla MRI装置、Achieva 3.0T TXが導入およびこの装置により撮影された拡散強調画像から再構成されたdiffusion神経撮影。右肺尖部には肺癌があり、肺癌が右腕神経叢に浸潤している状態が描出されています。この装置の他に1.5TのMRIが2台導入されており、新棟ではそのうちの1台が3T装置に更新予定です。

US(超音波検査)

超音波は最も簡便で侵襲がなく、単純エックス線撮影に次いでコストの安い、画像診断の優等生です。本学では超音波診断は機能検査部に属することから、同部の臨床検査技師と協力して精密な検査を行っています。

大学病院という施設の特殊性ゆえ、虫垂炎の診断を依頼されることはさほど多くありませんが、腹部領域では胆石、膵癌といった一般的に超音波が発見契機となる疾患は勿論、胃がんや腸重積まで、依頼があれば超音波で診断しており、研修医の先生方にも多彩な症例を経験してもらっています。また、高周波プロープを用いた表在臓器(乳腺、甲状腺、唾液腺、頸部、神経など)の診断は乳腺甲状腺外科と協力して別枠で検査を行い、乳腺についてはマンモグラフィーやMRの読影と併せ、乳癌の診断もできる放射線科医を育成しています。

超音波検査予定表(放射線科が関与する分のみ)

当院では東芝 Aplio series 3台(写真)、日立 HI Vision、GE LOGIQ E9 の5台体制で検査を行っており、Doppler は勿論、造影超音波、3D 再構成にも対応しています。

IVR(Interventional Radiology)

IVRは画像ガイド下にカテーテル等を用いて診断治療を行う手技の総称であり,血管系と非血管系に大別されています。当科では院内の多くの科からの依頼を受けて心臓を除くIVRの多くを手掛けています。

血管系IVRはさらに腫瘍と血管病変に対する治療に分けられます。腫瘍に対する治療で最多のものは肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法であり、全例を放射線科で行っています。適応や治療方針について消化器内科とは毎週1回カンファランスを行い、ラジオ波焼灼療法を行う消化器内科、陽子線治療を行う放射線腫瘍科、外科切除を行う消化器外科と連携しながら、種々の組合せにより肝細胞癌に対する集学的治療を行っています.このほか、泌尿器科の依頼に対して膀胱癌に対する動注カテーテル留置も多く行っており、変わったところでは皮膚腫瘍などその他の腫瘍に対する動注を行うこともあります。また、整形外科からの依頼で椎体全摘前の術前塞栓術を行うこともあります。

血管病変に対する治療は塞栓術と血管形成術に分かれます。塞栓術のうち、出血に対する塞栓術は緊急IVRの柱であり,迅速に対応しています.外傷全般、喀血,吐下血,産科出血や術後出血など多岐にわたります.その他、頭部以外の動脈瘤や血管奇形に対する塞栓術を行っています。血管形成術では、腸骨動脈・下肢動脈の経皮的血管形成術・ステント留置術を中心に腎動脈狭窄、透析シャントなどに対する治療にも対応しています。胸腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は心臓血管外科と協力のもと当科主導で行っており、2013年1月からは新病棟に血管造影装置を備えたハイブリッド手術室が開設され更なる症例の増加が見込まれます。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術前後の血管造影
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置術前後の血管造影

非血管系IVRでは、CTガイド下膿瘍ドレナージとCTガイド下生検を全例当科で施行しています。脳神経系のIVRは脳神経外科が中心となって施行されていますが、当科のスタッフも診断・治療に積極的に関与しています。以上の他にも血液内科からの依頼で頸静脈的肝生検術、小児外科からの依頼に対して経皮経肝的門脈拡張術、消化器外科からの依頼で術前の門脈塞栓術など様々な院内のニーズに対応しています。また、放射線科医が常駐していない近隣病院からのIVR依頼もあり、出張することもしばしばあります。大学病院にとどまらない、広い地域のIVR治療を担っています。

(文責:高橋信幸、森 健作)

RI(核医学検査)

核医学検査部門では放射性医薬品を用いた検査を行っている。静脈注射やカプセルで投与した放射性医薬品から放出されるガンマ線の計測、撮影を行い、放射性医薬品の体内分布から臓器の血流や代謝といった機能を評価している。

当院ではSPECT装置1台、SPECT/CT装置2台、うち1台は半導体検出器を用いた最新の機器を導入している。各科の協力のもと、脳血流、心筋血流、骨などの検査を行っている。また、外来でのヨード内服療法を行っている。

当院は核医学専門医教育施設に認定されている。通常の核医学検査だけでなく、AIC画像検査センターとの協力のもと、FDG-PETをはじめとしたPET/CT検査に関しても教育、研修が行える体制をとっている。

GI(上部消化管造影検査)

いわゆる「X線透視」です。バリウムを使った消化管造影検査が代表的です。内視鏡等の技術の進歩により出番は減りましたが、胃癌検診、消化器癌の術前評価や放射線治療中の病変評価などで今でも必要とされる検査です。

また、消化管の透視撮影の技術は血管撮影・IVRの基本でもあり、「正しい透視の出し方」を学ぶことができます。

昨今は技師に任せきりになりがちですが、撮影と診断が不可分な性質があり、本来は医師も関わる必要があります。当科では放射線科医でも消化管撮影技術を継承し、上部消化管造影や注腸造影を自分できる放射線科医を育成しています。

<検査件数(当科で実施した検査件数)>
2018年度
上部消化管造影118件、注腸8件、小腸追跡造影8件、低緊張性十二指腸造影5件

2019年度
上部消化管造影57件、注腸9件、小腸追跡造影9件、低緊張性十二指腸造影2件

2020年度
上部消化管造影56件、注腸2件、小腸追跡造影2件、下咽頭造影1件

当院ではキャノン製Cアーム型X線TVシステムUltimaxを導入しています。任意の方向からの撮影を可能にしたCアームとデジタル平面検出器の組み合わせは非常に使いやすく、質の高い検査を実現しています。右は実際にこの機械を用いて撮影された胃角部の胃癌です。

2018年4月~2019年3月
小腸8、上部消化管117、低緊張5 注腸8 嚥下1

2019年4月~2020年3月
咽頭造影1、上部消化管56、注腸9,小腸造影9,低緊張十二指腸造影2、嚥下2

2020年4月~2021年3月
上部消化管造影55件、注腸2、小腸造影2、嚥下造影1咽頭1